東日本大震災の被害で避難中である福島県にある双葉町の住人のひとりが、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で警視庁に逮捕されたことを受け、義援金を辞退したというニュースが流れました。

しかしこれが住民の同意なしに決められいきなり発表されたことで、震災で避難中の住民かもとまどいの声が聞かれるようになります。そしてそのことがニュースで流れた後ネットで広まり、話題となりました。

さて、その義援金辞退の件は今、どうなっているのでしょうか。
Campaign to raise funds.
Campaign to raise funds. / MJ/TR (´・ω・)



双葉町住民の避難


福島県双葉町は福島第一原子力発電所の5号機と6号機が存在しますが、先の東日本大震災で甚大な被害を受けたため、大勢の避難の必要がある住民出ることになります。そのため震災直後には、さいたまスーパーアリーナが避難先となり、町の役場機能毎そこに移転することになります。

その後さいたまスーパーアリーナの再開に伴い、埼玉県加須市にある廃校となった高校校舎に移転。

しかし、そこにいた1人であるS(57)という人が警視庁に逮捕されます。逮捕容疑は3月、都立高校の女子生徒(17)に祈祷師と名乗り、「生き霊がたたっている。除霊するので裸の写真を送りなさい」などと言って電子メールで写真を送らせたというものらしいです。

■asahi.com(朝日新聞社):町ごと避難、心強さも不安も 福島県双葉町の1200人 - 社会 ※リンク切れ


企業、個人からの義援金辞退表明


この事件を受けて、同町の井戸川克隆町長は1日、避難民がいる旧高校での住民集会で事件に触れ、「おわびの気持ちから義援金を辞退する」と表明されます。

しかし、これは町長がいきなり決めたことのようで、出席していた議員からも「聞いていない」「辞退はおかしいのではないか」との声も上がったといいます

さらにこれは他の避難先にも伝わり、住民も寝耳に水の出来事に対し、混乱したとのこと。
そしてこのニュースは各種報道機関から流れましたが、それがネットのニュースサイトやそこからの転載で広まってゆきます。

すると、この出来事に対しての反応は、ほとんどのものが「何故?」というものでした。すなわち、悪いのは逮捕された1人なのに(但しこれもまだ裁判で判決が確定しているわけではないのであくまで被疑者ですが)、何故今、それと関係なく避難先で苦労している被災者が、義援金の辞退を同意なしに決められないといけないのか、という感じで。

尚、埼玉県内のロータリークラブ関係者が持参した500万円など7日までに2件の義援金の受け取りを断ったそうです。これの理由として、町長のコメントは『「私たちは他に行くところがない。町民が連帯で責任を取らなければ、お世話になっている地域から理解されないと感じた。町民がここで生活していくために、あえて下した決断だ」と、涙をにじませながら訴えた。』とのこと。

ちなみに同じく町長のコメントで『「国や東電からの補償も断るかのように勘違いした町民がいるかもしれない。説明不足の面もあった」と述べ、辞退はあくまでも一般の個人や企業からの義援金であることを強調した』とあり、辞退は一般の個人や企業からの義援金が対象であった模様。

■福島第1原発:義援金支給辞退で双葉町に抗議相次ぐ - 毎日jp(毎日新聞) ※リンク切れ


義援金辞退撤回


しかし、それでも当事者ではない人達が義援金を受け取れないことについての批判は高まってゆきます。そして全国からメールなどで「やめることはないのでは」などの意見が1週間で約300件寄せられたとのこと。

その結果、辞退表明から約一週間経った6月8日、「強い世論に従う」として、辞退が撤回されました。
同町のHPでは一度は止められていた義援金を受け付けを再開し、口座番号も掲載されています。

■時事ドットコム:義援金辞退を撤回=「強い世論に従う」-福島・双葉町 ※リンク切れ
東日本大震災双葉町義援金の受付について| 双葉町公式ホームページ


義援金は誰に向けられているのか


しかし、最初の辞退からネットでも、そして私個人でも非常に疑問が湧いていて、何か他に理由でもあるのかと思わず考え込んでしまいました。確定は出来ませんが、多分報道以上のことはなかったと思いますけど(万が一あれば続報を出す予定)。


自分としては、やはりたとえ個人が犯罪を犯したとしても、それを自治体の人全体で追うのは違うと思うのですよ。悪いのは犯罪を犯した1人であり、そこと同じ所に住まう人は悪いわけでは無いと。
たしかに避難中という緊急事態でピリピリしているのはあるでしょうが、そんな1人だけのことと避難している大半の人は違うというのは、避難先の住民もわかっていると思いますし。

あと、双葉町に限ったことでありませんが、個人的には募金などでの義援金は、大震災で被災した個人(人間)に向けているつもりです。形式的、機能的には自治体なり組織なりに渡される義援金も、あくまでその集合で出来る力によってそこに属する県民なり町民なりの個人個人が立ち直る手助けになるためのものだと思うので、これを使うのに、それが故意であれ意図しないものであれ、自治体が被災者を無視するような状態になってはいけないと思われます。

■関連:福島県双葉郡の義援金・救援物資受付のまとめ