一時期、とあるネットのサイトが、ネット上のみならず、世界全体を騒がせ、マスメディアのニュースでもその名前が何度も掲載されました。そのサイトの名前は「WikiLeaks」。
 このサイトに、各国の機密とされる情報が次々と掲載されたため、世界中の注目を集め、そして政府までも動揺させることとなります。

 さて、日本のメディアでは一時期の波も収まり、東日本大震災など他に大きなニュースもあったせいか、最近はあまりその名前が報道される機会はありませんでした。では今、そのWikileaksはどうなったのか、今日はそれについて書いてゆこうと思います。

wikileaks
wikileaks / Sean MacEntee



WikiLeaksの設立



Julian Assange, Wikileaks / New Media Days


 まずはWikiliaksとは何なのかというところから。
 これに関係するニュースを見ていた方は「各国の機密情報をリークするサイト」くらいには知識があると思いますが、だいたいあっています。これは政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開することを目的として作られたウェブサイト。

 開始は2007年あたり(詳細は不明)。設立したのはジュリアン・アサンジという人物。彼はオーストラリア国籍を持つ人物で、WikiLeaksの設立までは、プログラマ、ハッカーとして行動していたと言われています。
 そのジュリアン・アサンジ氏が2007年よりWikileaksを開設。その運営には、本人及び設立の前にジュリアン・アサンジ氏が声をかけた各国のジャーナリストや技術者などが行なっている上、各国にボランティアがいると言われています。

 ちなみにアサンジ氏はオーストラリア国籍ですが、自身が狙われるのを防ぐためか居場所を固定せず、世界中を渡り歩いていたとされています(過去形なのは後述)。

 ■内部告発サイト「ウィキリークス」とは?創設者が語る「使命」 国際ニュース : AFPBB News
 ■参考:WikiLeaks:About - WikiLeaks(英語)


WikiLeaksの特性



wall2 / Nils Geylen


 さて、WikiLeaksの大きな特徴としては、もちろ機密情報の公開がありますが、それが匿名性という原則があります。その匿名性により機密情報をリークした人が特定されないように方策が為されており、そのことでWikiLeaksのリークサイトとしての信頼性を増すことを目的としていると思われます。
 そしてデータセンターの場所はスウェーデン・ストックホルムの地下にあります。これは。PRQという企業のホスティングサービスを利用しているのですが、このデータセンターは冷戦時代に作られた核シェルターを改造したものということ。また、この企業は法的介入にも十分な対策がなされているとのこと。

 ■核爆弾が上空で爆発しても耐えられる!?ウィキリークス機密データ格納地下施設(スウェーデン):カラパイア

 また、メインのサイトが潰れたときも運営が止まらないように、各国にミラーサイトがいくつもあるようです。

 ■Wikileaks Mirrors

 ■参考:技術記者が解説する「ウィキリークスを潰せない理由」(前編):日経ビジネスオンライン


 ちなみに、あまりネットのことを知らない人はWiki=Wikiliaksと思っている人がいるでしょうが、当然違います。おおざっぱに説明すると、Wikiはネット上のツールの名称であり、Wikiliaksはそのシステムを利用した1サイトにしかすぎません。よってインターネット百科事典Wikipediaなど、ほかのWikiと名のつくサイトとはほぼ無関係です。
 余談ですが、Wikipediaが流行りだした時、WikipediaのことをWikiと言うと、高確率でツッコミが入るということがありましたな。


Wikileaksでリークされた重大情報


 さて、そのようなシステムのもとで運営されたWikiLeaksは、数々の機密情報の公開を行ないます。そしてその中には非常に重大な機密情報も公開され、世界中の一般市民のみならず、報道、そして政府をも震撼させることになります。
 その中で、特に注目されたものを以下に挙げてゆきます。

イラク戦争の民間人・ロイター記者殺傷動画公開


 2010年4月に、2007年7月12日、イラクに駐留しているアメリカ軍のヘリコプターが、ほぼイラク市民やロイターの記者を銃撃し殺傷。ジャーナリストを含め12人が亡くなったと推定されています。
 当初、米国は武装兵への攻撃としていましたが、ロイターはこれを否定。情報公開を求めますが拒否。
 しかし、WikiLeaksにより事件の動画が公表されます。銃撃された人は武装兵ではない一般人と多くの人は認識し、そこから世界中に拡散し、非難が集まります。

 
 ※銃撃映像でもあるので、やや閲覧注意のこと。

 その後、情報をリークしたとされる米軍諜報アナリストが同年5月に逮捕されました。

 ■参考:WikiLeaks(ウィキリークス)が新たな注目の的に -問題の動画と創始者の横顔 - 小林恭子の英国メディア・ウオッチ - BLOGOS(ブロゴス)
 ■参考:July 12, 2007 Baghdad airstrike - Wikipedia, the free encyclopedia(英語)


アフガン紛争の資料公開


 2010年7月、アフガニスタン紛争に関するアメリカ軍の機密資料約75000点が公表されます。内容はパキスタンの情報機関とアフガン武装勢力との関係や、未公表の民間人死傷案件。しかし中でも問題とされたのは、アフガン側のアメリカへの情報提供者の身元情報が含まれていたこと。これにより身元提供者に危険が及ぶという可能性に言及されました。
 

イラク戦争の機密文書公開


 2010年10月、イラク戦争に関する米軍の機密文書約40万点が公開されました。その内容として、民間人の殺傷、イラク人拘置者への拷問報告などが挙げられました。
 かつてイラクではアブグレイブ刑務所問題が起こったこともあり、この件も注目を集めることになります。

 ■参考:グアンタナモ収容所はその後どうなったのか : Timesteps
 ■参考:アブグレイブ収容所/新たに女性への性的虐待/上院軍事委が容疑調査


アメリカ外交公電流出


 これがWikiLeaks最大の話題となったもの。
 2010年11月28日、WikiLeaks上でアメリカ合衆国の機密文書である外交公電がリーク。その内容において多くのことに触れられていました。
 その内容は政治的なものから、外交官などが語るその国の人物についての悪評まで様々。例えば在韓国大使が送った公電には、北朝鮮の体制崩壊を想定して韓国側と協議したことが記されていたり、「イランが北朝鮮から核弾頭を搭載できる中距離弾道ミサイル19基を獲得した」というアメリカの情報当局の分析を示す外交公電などがありました。

 日本関連のものも存在し、去年4月に当時の麻生首相が中国を訪問した際に「胡錦濤国家主席は自信にあふれて落ち着いていたが、温家宝首相はとても疲れていて、経済危機への対応などでプレッシャーがあるようだ」と内部で話していたという情報が、北京のアメリカ大使館からワシントンに送られていたといいます。

 ちなみにこの時公開された情報は一部で、その後断続的に残りの外交公電が公開されています。

 ■流出の米外交公電 当時の麻生首相の発言も | 日テレNEWS24
 ■アメリカ外交公電Wikileaks流出事件 | Lei's Free Blog
 ■参考:アメリカ外交公電ウィキリークス流出事件 - Wikipedia


リークによる影響


 これらのリーク、とりわけメアリカ外交公電のリークは世界に激震を起こします。ホワイトハウスはこれらが同盟国や外交官を危機に晒すと強く批判します。

 そして、このあと12月からウィキリークス周辺での圧力が強くなります。

 まず、Wikileaksはその運営資金獲得方法の大きなものとして、世界中からの支持者からの寄付がありました。しかし外交公電の公開以降、これらのサービスから閉め出されるケースが相次ぎました。まず12月1日には米Amazon.comが同社傘下のホスティングサービスでWikiLeaksのサーバーを停止。続いてDNSサービスプロバイダーEveryDNS.netが、WikiLeaksをターゲットにしたDDoS攻撃によりほかの利用者に支障が出るとしてサービスを停止。
 そして世界的に広まっている決済サイトであるPaypalも、利用規約の「不法行為目的にサービスを利用してはならない」にWikiLeaksが違反したとして、WikiLeaksのアカウントを永久停止することになります。
 企業は、これらに対して政府の圧力はないとしています。

 ■PayPal、内部告発サイト「WikiLeaks」のアカウントを停止 - ニュース:ITpro

 さらに、アメリカの高官は過去の各リークに対して、司法的手続きを行なうことに言及し、FBIに対しての捜査協力要請などを行ないました。


ジュリアン・アサンジ氏逮捕


 そんな騒ぎが収まらない12月7日、創設者のジュリアン・アサンジ氏が逮捕されます。これは機密情報のリークに関したものではなく、2010年8月20日にスウェーデンで女性と彼の性的関係に関連(強姦容疑)してすでに逮捕状が請求されていました。そして、11月30日、ICPOはスウェーデンからの要請により、「セックスに関する犯罪」の容疑でアサンジを国際逮捕手配、その後出頭して、前述のように12月7日の逮捕されることになりました。
 その後、保証金240,000ポンド及びパスポートの没収を条件に保釈が許可され、現在はノーフォークの「エリンガム・ホール」で過ごしているとのこと。

 しかし、逮捕された時が時だったため、支持者からは「でっちあげ」という声が挙がり、各地でデモなどが起こります。そして担当弁護団も見せしめ捜査として争う姿勢をみせています。


Assange becomes a hero - Support Wikileaks - Free Assange / Takver



日本に関係する情報のリーク


 さて、ここで気になるのはやはりWikiLeaksが日本に関するものでどのようなリークを行なったかということ。
 まず、11月の段階。

 ■ウィキリークスが公開した日本関連公電 - Japan Real Time - jp.WSJ.com

 やはり、アジア外交系のものが多いみたいです。
 これらは順次リークされていました。まず今年2月のもの。

 ■ウィキリークスが暴露「日本政府が諜報機関の創設を準備」―韓国(サーチナ) - livedoor ニュース

 さらに5月に注目されるものがリークされました。finalvent氏のブログに解説付で詳しく。

 ■ニューヨークタイムズに掲載されたウィキリークス日本発公電について: 極東ブログ

 他にも、原発に関する公電も含まれていた模様。

 ■米公電が指摘していた危険な日本の原子力(ウィキリークス) - FRANCE MEDIA NEWS 福島原発と東北関東大震災に関するフランスメディア・ニュース
 ■ついに来た! ウィキリークスが日本の原発に関する公電を公開! - ガジェット通信

 ただ、この時期の報道は、日本で東日本大震災の報道で埋まり尽くし、このニュースはあまり注目されなかったようにも思えます。
 最近では、2006年に日本がアメリカに安保理の2段階拡大を打診したというリークがありました。

 ■日本が安保理の2段階拡大を打診 06年、米に麻生外相 - 47NEWS(よんななニュース)


ハッカー集団AnonymousのPayPal攻撃


タイトルなし
タイトルなし / believekevin


 さて、ジュリアン・アサンジ氏の逮捕や各Webサービスからの封鎖など、圧力相次いだことに対し、WikiLeaksの支持者からは反発が相次ぎ、デモも起こったことは先に語りました。
 その反発の一つの動きとして、WikiLeaksに対してを遮断したWebサービス等に対しての攻撃が起きます。それを行なったのが、国際的ハッカー集団「Anonymous(アノニマス)」。もしかしたらこの名前を最近ニュースで聞いたという人もいらっしゃるでしょう。そう、ソニーのサーバにハッキングを行ない、個人情報を盗み出したとされるメンバーが所属していた団体です。

 ■参考:英警察がハッカー集団の中心メンバー逮捕、全容解明へ前進か | ワールド | Reuters

 WikiLeaksを支持していたAnonymousのメンバーは、12月6日と10日、PayPalに分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を仕掛けることにより、WikiLeaks関連のサービスを停止した他企業のWebサイトも相次いで攻撃しました。

 ■WikiLeaksの支持派、WebでDDoS攻撃の目的を説明 - ニュース:ITpro

 その後2011年7月、この件に携わったとされる14人が米国内において、2010年のPayPalサイト攻撃における共謀罪などで拘束されます。

 ■Anonymousメンバー14人をPayPalサイト攻撃容疑でFBIが逮捕 - ニュース:ITpro

 これらの行為についての議論は、ハッカー達の間でも今も為されているとのこと。

 ■参考:「アノニマス」対「反アノニマス」、ハッカー同士が世界大会で大激論 国際ニュース : AFPBB News
 ■参考:容疑者逮捕が続くAnonymousとLulzSec、共同でPayPalボイコットを呼びかけ | ネット | マイコミジャーナル


その後のWikiLeaks


Procedencia de los cables desvelados por Wikileaks
Procedencia de los cables desvelados por Wikileaks / otromundoesposible_com


 その後ですが、いくつかのサイトがつながらなくなったものの(ここなど)、いくつもあるミラーサイトがそれを補い情報を公開し続けています。下はその一部。

 ■Wikileaks Mirrors

 さっき「日本に関係する情報のリーク」で書いたように、今年の7月でも日本に関する情報が出てきていたりしています。
 あと、Twitterアカウントも存在して、連日更新が行なわれています。

 ■WikiLeaks (wikileaks)

 ちなみにWikiLeaksそのものではありませんが、英語であるWikiLeaksやそのミラーを日本語訳しているサイトも存在します。

 ■Wikileaks翻訳まとめ - We translate Wikileaks thingy. - トップページ
 ■ウィキリークス・ウォッチ・ジャパン Wikileaksの翻訳まとめ等

 (追記:8/11 23:00)
 ただ、前から検閲が行われている中国では、WikiLeaksという後を含むだけでもリンクできないようになっているそうです。またタイでもアクセス規制が行なわれ(これはタイでおこなれているデモ闘争にも関係があると言われています)、オーストラリアでも検閲の動きがあるらしいです。

 しかしそんな反面、WikiLeaksをノーベル賞に推す動きなんていうものもあるようです。

 ■ウィキリークス、ノーベル平和賞候補に推薦=ノルウェー議員 | Reuters


WikiLeaksは何をもたらしたか


 WikiLeaksの誕生、及び影響は非常に大きかったと思われます。それは既にリークされた情報そのものもそうですが、それよりこの存在が、報道、ひいては情報というものを根本的に考える機会になったということ。

 ■参考:asahi.com(朝日新聞社):【放送】ウィキリークス報道で露呈した各メディアの「立ち位置」 - メディアリポート - デジタル

 さて、これからWikiLeaksはどうなるのか。このままいろいろあって潰れるのかというと、そうは思いません。それは情報を求める、もしくは発信したい需要がある限り、多くの場合は存在され続けると思うから。これは、ジャーナリズムが弾圧されていた時代でも生き残ったのと似たようなものがあります。
 仮にWikiLeaksがなくなったとしても、WikiLeaksほど大規模勝つ目立つものではなくても、同じようなことが個人的、ゲリラ的に行なわれる可能性というのはあると思われます。実際、日本でも尖閣諸島沖中国漁船の動画が突発的に公開されたのですし。

 ただ、問題はWikLeaksからのリークやその他告発される情報のそれらの正確性が実証され続けるかです。近年、ジャーナリズムの腐敗がよく言われますが、そういった告発団体が絶対がそうならないとは限りませんし、たとえその意図を保ち続けられたとしても、間違いを犯さない人間なんているわけはないので、誤情報が出てしまい、それが大きな影響を与えることもあります(まあこれは既存ジャーナリズムも同じですが)。また、晒すことで逆に罪の無い人を陥れる可能性のある情報も存在します。
 WikiLeaksの場合、今はまだそのへんは厳密に考えられ、正常に機能しているようですが、誰かのミス、もしくは悪意のある人が入り混んだときの危険性(その予防策)も考慮する必要があるかもしれません。


 ともあれ、Wikileaksという存在が、それまでの情報、広報、報道のあり方に対して一石を投じたのは間違いないでしょう。そして世界の人達は、これからどうようにしてこのような過去、機密とされていた情報と向き合ってゆくのでしょうか。


20101210-NodeXL-Twitter-wikileaks
20101210-NodeXL-Twitter-wikileaks / Marc_Smith


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 ■参考:NHK クローズアップ現代 機密告発サイト・ウィキリークスの衝撃
 ■参考:ウィキリークス - Wikipedia
 ■参考:ジュリアン・アサンジ - Wikipedia